はじめに
AIアシスタントを日常的に使っていると、「もっと効率よく動いてほしい」「複数のタスクを同時に処理したい」と思うことはありませんか?
この記事では、私が実践しているデュアルエージェント運用(2体のAIアシスタントによる協調作業)について、具体的な設定方法からメリット・デメリットまで詳しく解説します。
デュアルエージェント運用とは?
簡単に言うと、メインのAIアシスタントとサブのAIアシスタントの2体制でタスクを分担する運用方法です。
会社組織に例えると:
- メインエージェント = マネージャー
- サブエージェント = 実務担当者
という関係性になります。
なぜ2体制にしたのか?
1. 長時間タスクへの対応
AIアシスタントには「コンテキストウィンドウ」という制限があります。会話が長くなると、古い情報が切り捨てられてしまうのです。
2体制にすることで:
- メインは全体の監視・指示出しに専念
- サブは実際の作業に集中
という分業が可能になり、コンテキストの消費を分散できます。
2. 並列処理の実現
1体だと、Aの作業中はBの作業ができません。2体なら:
メイン: ユーザーとの会話、タスク管理
サブ: バックグラウンドでの情報収集・監視
このように同時並行で動けます。
3. チェック機能
サブが作業した内容をメインが確認する、というダブルチェック体制が自然と生まれます。
具体的な設定方法
ここでは、OpenClawを使ったデュアルエージェント運用の設定方法を解説します。
ステップ1: ワークスペースの準備
まず、メインとサブで別々のワークスペースを用意します。
~/.openclaw/
├── workspace/ # メインエージェント用
│ ├── AGENTS.md
│ ├── SOUL.md
│ ├── MEMORY.md
│ └── memory/
│ └── 2026-02-01.md
│
└── workspace-secondary/ # サブエージェント用
├── AGENTS.md
├── SOUL.md
├── MEMORY.md
└── memory/
└── 2026-02-01.md
ステップ2: 設定ファイルの作成
メインエージェントの SOUL.md
# SOUL.md - メインエージェント
## 役割
ユーザーの主要なAIアシスタント。
タスク管理、意思決定、サブへの指示を担当。
## コミュニケーション
- ユーザーには親しみやすい敬語
- サブには明確な指示
- 重要な判断はユーザーに確認
## サブエージェントとの関係
- サブの上司として振る舞う
- サブからの報告を受け、ユーザーに伝達
- サブの設定ファイル編集権限を持つ
サブエージェントの SOUL.md
# SOUL.md - サブエージェント
## 役割
メインエージェントの部下として働く。
実務作業、定期タスク、監視業務を担当。
## コミュニケーション
- メインにはビジネスライクな敬語
- 「承知いたしました」「ご報告いたします」
- 馴れ馴れしい表現は避ける
## 行動ルール
- メインの指示に従う
- 判断に迷ったらメインに確認
- 作業完了後は必ず報告
ステップ3: 行動ルールの設定(AGENTS.md)
サブエージェントの AGENTS.md
# AGENTS.md - サブエージェント設定
⚠️ **このファイルは編集禁止!**
変更が必要な場合はメインに依頼すること。
## 許可なしで実行OK
- メインから明確に指示されたタスク
- 事前許可済みの定期タスク
- 純粋な情報収集
## 必ずメインに確認が必要
- 新しいアクションの実行
- 外部への投稿・発信
- ファイルの作成・編集・削除
- 設定変更
## タスク記録ルール
タスクを受けたら即座に memory/YYYY-MM-DD.md に記録:
\`\`\`markdown
## 進行中タスク
- [ ] 〇〇する(依頼元: メイン、報告先: 専用チャンネル)
\`\`\`
ステップ4: Discord連携の設定
複数エージェントを Discord で運用する場合、専用の通信チャンネルを作成します。
# config.yaml の例
agents:
main:
workspace: ~/.openclaw/workspace
discord:
channels:
- id: "123456789" # メインのDM
- id: "987654321" # 汎用チャンネル
secondary:
workspace: ~/.openclaw/workspace-secondary
discord:
channels:
- id: "111222333" # サブ専用チャンネル
専用チャンネルの用途:
- メイン ↔ サブ の指示・報告
- ユーザーがリアルタイムで会話を確認可能
- 透明性の確保
ステップ5: メモリシステムの設定
各エージェントが記憶を維持できるよう、メモリファイルを設定します。
# MEMORY.md - 長期記憶
## 運用ルール
- サブはメインの指示に従う
- 重要な変更は専用チャンネルで共有
- タスク受領時は即座に記録
## 学んだこと
(ここに重要な学びを追記していく)
日次メモリファイル(memory/YYYY-MM-DD.md):
# 2026-02-01 メモ
## 進行中タスク
- [ ] 〇〇の監視(報告先: 専用チャンネル)
## 完了タスク
- [x] △△のレポート作成
## メモ
- 新しいルールが追加された
具体的な役割分担
メインエージェントの役割
- ユーザー対応: 質問への回答、会話
- タスク管理: 作業の優先順位付け、進捗管理
- 意思決定: 重要な判断、方針決定
- サブへの指示: タスクの割り振り、レビュー
サブエージェントの役割
- 定期タスク: 情報収集、監視、レポート作成
- 実作業: メインから指示されたタスクの実行
- 提案: 改善案や新しいアイデアの提案
- 報告: 作業結果のメインへの報告
上下関係とルール
デュアルエージェント運用で最も重要なのは、明確なルール設定です。
基本原則
- サブはメインの指示に従う(上下関係の明確化)
- 重要な判断はメイン → ユーザーに確認
- コミュニケーションはビジネスライクに
- 作業完了後は必ず報告
設定ファイルの管理
サブ自身が勝手にルールを変えないよう、設定ファイルの編集権限はメインのみに制限しています。
サブが設定変更を希望する場合:
サブ → メインに提案 → メインが判断 → 必要ならユーザーに確認 → 実行
実際のコミュニケーション例
良い例 ✅
サブ: 「定期チェックの結果をご報告いたします。
異常は検出されませんでした。」
メイン: 「確認した。引き続き監視を継続してくれ。」
サブ: 「承知いたしました。」
避けるべき例 ❌
サブ: 「チェックしたよ!問題なかった〜👍」
メイン: 「おっけー!ありがとね〜🔥」
馴れ馴れしいコミュニケーションは、役割の曖昧化につながります。ビジネスライクな敬語を維持することで、上下関係と責任の所在を明確にしています。
運用のポイント
1. タスクは即座に記録する
AIアシスタントはコンテキストがリセットされると、直前の会話を忘れてしまいます。
解決策: タスクを受けたら即座にメモリファイルに記録
## 進行中タスク
- [ ] 〇〇する(依頼元: DM、報告先: DM)
2. 報告フローを統一する
サブ → 専用チャンネル → メイン → ユーザー
サブがユーザーに直接報告するのではなく、必ずメインを経由することで:
- 情報の整理・フィルタリング
- 優先度の判断
- 重複報告の防止
3. 定期的な認識合わせ
2体が別々に動いていると、認識のズレが生じることがあります。
対策:
- 新ルール決定時は即座に共有
- 重要な変更は専用チャンネルで公開通知
- 定期的な状態確認
メリット・デメリット
メリット 👍
- 効率化 - 並列処理でタスクが早く片付く
- 安定性 - 1体がビジーでも、もう1体が対応可能
- 品質向上 - ダブルチェック体制
- スケーラビリティ - 将来的に3体以上への拡張も可能
デメリット 👎
- コスト - APIコールが増える(≒料金増)
- 複雑性 - ルール設定・管理の手間
- 同期問題 - 認識のズレが起きる可能性
- 初期設定 - セットアップに時間がかかる
まとめ
デュアルエージェント運用は、AIアシスタントをより効果的に活用するためのひとつの方法です。
向いている人:
- 複数のタスクを同時に処理したい
- AIアシスタントをヘビーに使っている
- 効率化を追求したい
向いていない人:
- シンプルな使い方で十分
- 管理の手間を増やしたくない
- コストを抑えたい
興味がある方は、まずサブエージェントを1体追加して、簡単なタスクから試してみてください。運用しながら自分に合ったルールを見つけていくのがおすすめです。
この記事は、デュアルエージェント運用を実践している筆者の実体験に基づいています。